久しぶりにボウリングをやりました。 ボウリングは、私が物心ついた頃にちょうどはやりだした記憶があります。あちこちに、これでもかというくらいボウリング場が建設されました。プロボウラーは人気の職業のひとつとなり、中山律子さんなどアイドル並みにもてはやされていたのを憶えています。 小学生になるかならないかの頃に、ボウリングのミニチュアゲームを誰かからプレゼントされました。その後の精巧なゲームとは違い、ピンは全部手で並べるような簡単なものでしたが、しばらく家族中ではまっておりました。スコアの付け方などはその時に憶えたので、後年ホンモノのボウリングをたしなむようになった時も、スペアやストライクの場合の計算方法に迷うことはありませんでした。むろん最近は、スコアをつけるのもすっかり電子化されて、自分で計算する必要もなくなっていますが。 私がホンモノのボウリングをするようになった頃には、すでにブームも去って、 ──あらゆるプロスポーツ選手の中で、いちばんギャラが安いのはプロボウラーだろう。 などと言われるようになって久しく、ほうぼうにあったボウリング場も大半は閉鎖に追い込まれていました。しかし、手軽な娯楽として、根強い人気もあり、だいたい適正な数になっていたように思います。 確か高校生の頃にはじめてやったような気がしますが、あまり記憶が定かではありません。わりとちょくちょく行くようになったのはやはり大学生になってからでした。遊園地に行ったりするよりは安上がりなのが良かったのでしょうか。 運動神経の鈍い私のことですから、成績は大したことはなく、しばらくは何度やっても2桁のスコアしか出ませんでした。まあ、一緒に行く友人たちも、何せ音大生だったりしますから、大半は同じくらいのレベルで、毎回 「なんて低レベルの争いなんだ!」 と誰かが叫ぶような状態でした。それだから、さほど劣等感を覚えるほどのこともなかったのですが、それでも時々異様に高いスコアをマークするヤツが出たり、全体ではともかく男の中で最下位だったりするとやっぱり少々凹みました。 大学を出てから中学校の講師をしていた頃、授業が午前中で終わってしまうと、昼食の前に渋谷のボウリング場へ行って、ひとりで4ゲームほど投げるということを毎週やっていた時期もあります。ひとりでやっていると回転が速く、4ゲームなどあっという間に終わってしまうのでした。うちのマダムにその話をすると、 「それって、暗くない?」 とツッコまれましたが、昼間だとレーンもすいていて、確実にすぐプレイできます。 その甲斐あってか、アベレージは少し上がりました。大した上がり方ではありませんが、120くらいはコンスタントに出るようになったのですから、常時2桁だった身としては大進歩です。黒(ストライクかスペア)が1ゲームに3回くらいは出ないと120にはなりません。 ただ悲しいことに、その時期になると、あんまり仲間でボウリングに行くということもなくなっていたのでした。それゆえ、上達した私のプレイを披露する機会もなく、そのうち授業後のボウリング場通いもやめてしまいました。 それからは、ごくたまに、何かのイベントの後などに ──ちょっとやってくか? みたいなノリで行くだけになりました。滅多にやりませんから、当然ながらまたレベルは落ちています。黒はたまに出ますが、続くことがなく、時々暴投してガーターになったりもして、3桁に乗るのが精一杯という感じです。自己最高は確か162かそのくらいを出したことがあるように記憶していますが、そんな数字はすっかり縁遠くなりました。140以上くらいになると、ダブルかターキーを少なくとも2回以上は出すか、取りこぼしを確実にスペアに決めてゆくかしないと難しいようです。私はダブルは時折り出しますが、ターキーというのは一度も経験がありません。 昨夜、マダムと外で食事をして、かなり満腹したので、少し腹ごなしに自転車で走っていたら、ボウリング場があったので、久しぶりにやってみることにしました。私は確か7年ぶり、マダムも同じく7年ぶりくらいだそうです。ちなみにマダムは私の運動能力についてはなめきっている節があり、少なくとも互角くらいの勝負ができると思っていたようです。正直なところ、何ポンドのボールを使っていたのかも思い出せないくらいで、私も自信がありませんでした。 最初のフレームは勘がつかめず、ガーターを出してしまったりしましたが、だんだん調子が戻ってくるのを感じました。私の投げ方はそんなに格好が良くはないのですが、妙な回転がつかないので、ほぼまっすぐにボールが転がります。従って最初の弾道さえ間違わなければ、まあいいコースに行きます。ただ回転が少ないだけに、1番ピンに命中しても、そのまま後ろへ倒れるだけで、なかなかストライクということにならないのが残念なところです。昔はそうやって残った1本を倒すのが得意だったりしたのですが、こちらの勘はあまり戻りませんでした。 それでもまあ、3ゲームやってすべて110を超えましたから、7年ぶりにしては好成績と言えましょう。 実は、過去のハイスコアが56だったというマダムに、多少のアドバイスをしたりしたので、それを自分にも応用したのでした。 ──ヘソを正面に向け、視線をピンから外さず、腰を充分に落として、ボールは投げるというよりも送り出すようにリリースする。 というような基本的なことを言いましたが、これが案外忘れがちで、マダムに言ったことを自分でも肝に銘じて投げたら、意外とうまく行ったのです。ピアノを他人に教えるようになってから、昔先生に言われてわかったようなわからないような気がしていたことがことごとくすっきりと理解できるようになり、 ──教えるというのはいちばんの勉強法だな。 と実感したことがありますが、ボウリングも同様だったのでした。 マダムは1ゲームめと2ゲームめで80台のスコアとなり、3ゲームめは少し落ちたようでしたが、それにしてもハイスコア56だった人が、7年ぶりにやってそれだけ出せたのですから、私のアドバイスが良かったのではないかとひそかに思いました。当のマダムも自分の変わり方に驚いたようではありましたが、私のスコアを見て憮然とし、不服そうに 「ボウリング得意だったのかぁ」 と言いました。良くて自分と同程度だろうと思っていたのは明らかです。得意というわけではありませんが、さすがに多少は入れ込んだことのある成果というべきでしょう。マダムは家族とばかりやっていたようですが、友達と行っていたらもう少し対抗心が出て練習する気になったかもしれませんね。 それにしても110超え程度で、何しろレベルの低いお話で失礼いたしました(^_^;; まあ、少し汗ばんだくらいで、腹ごなしにはちょうどよい運動であったと思います。 (2006.11.23.) |