忘れ得ぬことども

肥満遺伝子について

 世の中には、いくら野放図に食べても一向に肥らない人がいるかと思えば、細心の注意を払ってもすぐに肥ってしまう人がいます。しばらく前のテレビで、肥る人は結局間食などで食べる分量が多いのであり、体質のせいにするのは間違いだというようなことをいう先生が出てきて、それを見て納得できなかった人も多いでしょう。
 私も肥る体質のようで、納得できなかったひとりですが、しかし考えてみると、食事に関しては不摂生な気配があるとは思い当たりました。量を食べている気はしないのですが、時間が不規則で、空腹を感じると食事にしていたようなところがあります。外出している時はあまり食べないのですが、うちにいると、わりといい加減になってしまっています。うちにいながら、空腹を我慢していたという経験はここしばらくなかったようです。

 それはともあれ、最近ではやはり肥満遺伝子というものが存在することがわかってきたそうです。
 正確に言うと、β3アドレナリン受容体(β3AR)という因子で、ABO式血液型がA抗体とB抗体の組み合わせによって決まるのと同様、A因子T因子という2種類の因子の組み合わせで型が決まるとのこと。両親からいずれかの因子をひとつずつ受け継いだ対の形をとり、その組み合わせにより、AA型AT型TT型に分けられます。なお血液型のO型に相当する、因子がブランクというものは存在しないようです。
 この3種類の型のどれかによって、安静時代謝量が異なるのです。つまり、全然なんにもしていない状態でのエネルギー消費量が違うのです。
 AA型がいちばん消費量が少なく、AT型、TT型の順に多くなります。
 燃費の違いと考えるとわかりやすいでしょう。AA型は燃費がよく、TT型は燃費が悪いことになります。
 同じ分量を食べていても、AA型は代謝量が少ないので、蓄積されるエネルギーが多い……つまり、肥ってしまうわけです。
 私の知人にも、いくら食べても肥れないとぼやく、やたら痩せた女性がいます。うらやましい限りだと思う人も多いでしょうが、それにはそれで悩みがあるようで。趣味で歌を歌う人なのですが、痩せすぎているので声の支えがうまくできず、芯のない声になってしまうと言います。
 彼女は、ものを食べるとすぐ、からだがカッカと火照ってきてしまうそうです。食べたものがたちまち燃焼してしまって、蓄積されないらしく、これは典型的なTT型なのでしょう。
 両親が共にAT型だと、子供は3種類いずれの型にもなりうるわけで、兄弟でまるきり体型が違うような場合はこのケースだと思われます。うちもどうやらそれで、妹はむしろ痩せの大食いタイプで親からT因子ばかり受け継いだらしい。私はさほどの大食でないにもかかわらずすぐ肥ってしまうので、A因子ばかり受け継いだのではないかと思います。
 もっとも、まだ調べて貰ってはいません。髪の毛一本で診断できるそうですが、診断料に1万円くらいかかるので、二の足を踏んでいます。私がTT型ということはなさそうですが、生活管理ができていないのと運動不足なのとでAT型のA因子ばかりが発現している可能性もあります。高校時代まではむしろ標準より痩せていたくらいなので、遺伝子のせいにできるかどうかは微妙なところです。

 肥満傾向が遺伝子で決まると言っても、それによって意識をどう持つかが大切でしょう。
 AA型と診断された人が、
 ──肥るのはやっぱり遺伝的な体質なんだから、仕方ないや。
 と開き直ってしまうのは、やはり問題があると思います。むしろ、
 ──体質がそうなんだから、余計気をつけないと。
 と思うべきでしょうね。
 私はATだかAAだかまだわかりませんが、肥ってしまったのは運動不足もかなり響いているはずで、この年明けから気をつけて泳ぎに行ったりしていた甲斐あって、3ヶ月で7sほどは減らすことができました。できればあと7sほど落としたいところです。
 肥満遺伝子と言っても、あくまで安静時代謝量が異なるというだけなのですから、他の人よりエネルギー消費を大きくするように努力しなくてはならないと思う次第です。

(1999.4.1.)

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