●プロローグ●
小樽に出かけてきます。
小樽商科大学という学校がありまして、小規模ながら、商科系の大学としては戦前からかなり高いレベルの学校として知られていたようです。卒業生は主に実業界で活躍している他、文学者の小林多喜二や伊藤整などもこの学校の出身です。今年で創立100周年を迎えるそうです。
この学校に、伝統のあるグリークラブがあります。学校自体ともほぼ遜色ない歴史を持っており、OBも相当な数にのぼります。
川口第九を歌う会の事務局長を務めている人が、このグリークラブのOBで、何年か前に私に仕事を頼んできました。
札幌でグリークラブの90周年記念演奏会があり、OBが出演することになっているのですが、卒業生の多くはすでに北海道にはおらず、東京近辺に住んでいる人が多いとのこと。それで首都圏勢は首都圏勢で出演ステージの練習をし、最後のリハーサルだけ北海道勢と合同でおこなって本番を迎える、ということにしたのでした。
ついては、首都圏勢の練習を仕切るための合唱指導者が必要だというわけで、私にお声がかかったのでした。
本番で指揮棒を握るわけではなく、いわゆる「下振り」という仕事ですが、私も札幌生まれなのでなんとなく親近感を覚え、一も二もなく引き受けました。
グリークラブのOBですから、皆さん合唱経験はある人たちなのですが、何しろ年齢層がかなり高いメンバーが多く、合唱として音を調えるのにはなかなか苦労しました。
その90周年演奏会には、残念ながら私は行けませんでした。実はその数週間前だったか後だったかに祖母の法事があって、札幌に行くことになっており、さすがに北海道にそうちょくちょく飛ぶわけにもゆかなかったのです。
そのあと、首都圏勢だけで、池袋にある同窓会の会館でミニコンサートをやったりしましたが、それでひとまずこのOB合唱団の活動は停止しました。
一年半くらい経って、また声がかかりました。
今度は、学校の100周年記念事業として、またグリークラブの演奏会を開催することになったとか。
それで、再び首都圏勢の指導をすることになったのでした。
去年のはじめくらいからやっていましたが、最初の頃はペースも月一度か二度で、メンバーの集まりも悪く、全然居ないパートがあったりしました。そんなペースにしては曲数も多く、けっこう手間取りました。
今年に入って、練習回数を増やし、一回ずつの時間も少し長くしてから、なんとかメドがついた感じです。
その記念演奏会が、この7月18日(2011年)におこなわれるのでした。
7月18日は、本来はChorus STで東京都合唱祭に出るはずの日でした。だから今回も聴きには行けないと思っていました。
が、3月11日の大地震で、東京都合唱祭が開催されることになっていた新宿文化センターが損傷を受けてしまい、しばらく使用停止ということになりました。都合唱祭は全部で5日間も要する大イベントであるため、それから他の場所を探してもそんな日数を確保することができず、とうとう今年は中止ということになりました。都合唱祭は去年まで毎年、五反田のゆうポートで開催されていたのですが、ゆうポートが閉鎖されて使えなくなり、新たな場所に移して早々の不運でした。
そんなわけで、怪我の功名というべきか、18日の予定が空いてしまいました。
それなら、小樽に行ってみても良いかな、と考えはじめたのでした。その後、交通費宿泊費も出してくれるという話になり、ありがたく行くことに決めました。
今晩から発つと言っても、前日入りするわけではありません。飛行機なんぞ使う気はさらさら無いのでして、この春全通したばかりの新幹線に乗って新青森へ、そこから夜行急行「はまなす」に乗り継いで早朝に札幌到着、すぐに小樽に向かうつもりです。「はまなす」にはカーペットカーという、横になれる床席があるのですが、これはすごい人気で、夏休みに入り立てとも言える連休中などは到底確保できませんでした。しかし普通の指定席でも、夜行高速バスクラスのリクライニングシートになっていると聞きます。多客期は普通の座席になるという不気味な噂もありますが……
明日の午後に演奏会があり、小樽に一泊して、また例によってあまり素直でないルートで帰ってこようと思っています。 (2011.7.17.)
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