I 今年(2011年)も去年の夏に引き続き、山梨県甲斐市にある「リフレッシュガーデンクレスト」に逗留してきました。 (2011.8.16.) |
II 8月15日(月)の朝は、「リフレッシュガーデンクレスト」の食堂で供される食パンとコーヒー、それに前夜「スーパーやまと」で買っておいたサラダや卵などで朝食を済ませました。この日はずっと宿でひきこもっていようかという話もあったのですが、マダムが、ここまで来たのなら「小作」のほうとうを食べたいと言うので、昼食は食べに出ることにしました。 午前中は、ホテル内のジムでトレーニングをします。マダムは来る前えらく張り切っていて、トレーニングウェアはもちろん、運動靴まで持ってこようとしていました。しかし荷物があまりにも重くなったため、残念ながら靴は置いてこざるを得ませんでした。 「靴はかないと危ないんだよ」 と主張していましたが、もともと入浴施設に付随したジムに過ぎず、ほとんどの人は裸足か、せいぜい靴下履きで利用する程度で、靴まで用意してくる人は稀ではないかと想います。 ジムには筋トレ用のマシンが5台、ダンベル、エアロバイクなどが置いてあり、自由に使えます。夕方以降は使う人も居るようですが、午前中は滅多に利用されず、1時間半ほど私たちの独占状態でした。 エアロバイクの「体力測定」モードでペダルをこいでみたら、なんと私は最高の「10」をマークしたので自分でも驚いてしまいました。何か間違っているのではないかと思ったほどです。ふだん特にトレーニングもしていませんし、筋肉などなまりまくっているに違いないのですが、同じ年齢の連中に較べれば体力があることになるのでしょうか。自転車だけは人並み以上に乗っているので、ペダルをこぐ運動に関しては馴れているということかもしれません。ちなみに毎日のようにフィットネス通いしているマダムの判定は「7」でした。 筋トレなど久しぶりで、たちまち汗びっしょりになりましたが、やった後は確かに爽快です。以前は少しやっていたのですが、また始めてみようかと思いました。 ジムから出て、風呂で汗を流します。屋上のワイン風呂に漬かっていたら、市の広報アナウンスが流れました。終戦記念日なので正午から1分間黙祷しましょう、という呼びかけでした。もっともだと思い、風呂から出て服を着、フロントの前に出たところでちょうど正午になったので、合掌して祈りを捧げました。 それから昼食をとりに「小作」へ出かけました。ほうとう屋「小作」はチェーン店化し、甲府近辺に何軒もあるのですが、私たちが向かったのは県立美術館前店です。 なんでもマダムが最近見たサスペンスドラマで、主人公がこの店で食事をするシーンがあったそうです。それで余計再訪したがっていたのでした。 宿から店までは2キロちょっとあります。暑いのでバスを使おうと考えていましたが、バス停まですでに700メートルくらいあって早くも汗をかいてしまったのと、バス停に着いてみるとしばらくバスが来ないようなのとで、やはり歩くことにしました。バス停自体がかんかん照りの日向にあり、そこに突っ立って20分以上待っているのと、バス停2区間分を歩くのと、疲れ具合はあんまり変わらないと思われます。 去年も同じことをして、汗びっしょりで店にたどり着いた憶えがあります。ほうとうには夏季限定ヴァージョンとして「おざら」という冷やし麺もあり、そちらを食べたい気分になっていました。ところが、店内の冷房がおそろしく強く、席に案内されて待っているうちに寒いくらいになり、普通に温かいほうとうを食べることにしたのでした。 ところが今年は世間が節電モードで、「小作」店内も去年ほどの冷房になっていません。正統派のほうとうは去年食べていたという安心感(?)もあり、今年は迷わずおざらを注文しました。それと、最近急に流行りだした「鳥もつ」も頼みました。鳥もつなどは別に珍しい料理とも思えませんが、甲府あたりのは水分の少ない照り煮になっているのが特徴で、古くから食べられていました。それが急にブレイクしたのは、去年の9月、全国のB級グルメを集めた大会で優勝したからだそうです。「みなさまの縁をとりもつ隊」なる普及部隊まであるそうな。マダムはこういう情報にはいやに詳しいのでした。 おざらは、氷で冷やした麺を熱い汁に漬けて食べる方式で、つまりつけ麺のほうとう版でした。麺が冷たいので、そのうち汁も冷えてきて、最後の頃にはすっかり冷や汁になっていました。その変化も楽しいところなのでしょう。 「小作」を出てから、一旦バスで甲府駅へ出ました。マダムが辞書を買いたがっていたからです。甲府駅からさらにイオンモールまで行かなければならないかとも思いましたが、幸い駅ビルの中の書店で用が足りました。 駅からは、バスで戻るより速いし安いので、電車にひと駅乗って帰ることにしました。 電車に乗ると、どこかでお祭りでもあるのか、浴衣を着た男女が目立ちました。中には花魁(おいらん)張りに肩まではだけて、眼のやり場に困るような着かたをしている女の子も居ましたが、着こなしが下手なのか意図的なのかよくわかりません。 竜王駅に着くと、そこからも浴衣の人たちが何人も乗ってきました。改札を出ると、駅員がブースを特設して、上諏訪駅までの往復切符を売っていました。帰ってから調べてみると、この日の晩には諏訪湖の花火大会があったようです。 宿に戻ってまた入浴し、そのあとしばらくマダムはシアタールームで映画を見て、私は部屋で仕事をしました。それから近くのファミリーレストランで夕食をとりました。 20時から、私はタイ古式マッサージを、マダムは垢すり+リンパドレナージュを予約していました。ここまでの日程が少々押し気味で、ファミリーレストランからはかなり急いで帰らなければなりませんでした。 タイ古式マッサージというのは去年同じ宿ではじめて受けてみたのですが、いわゆる痛気持ちいいという体験でわりと気に入りました。確か去年は日本人のお姉さんが施術してくれましたが、今年は日本語は達者ながら明らかに日本人ではない女性が術師でした。タイ人だったかどうかはわかりません。去年よりストレッチがきついような気がしました。 主に足をやって貰いました。そのせいかどうか、翌日になると、久々の筋トレの後遺症で肩や二の腕には筋肉痛がありましたが、足にはほとんど来ていませんでした。 マダムのほうは、こすられ過ぎて肌がひりひりしたり、洗髪をしてくれたのは良いが思いっきり爪を立てられてキューティクルが落ちたり、いろいろと文句を言っていました。術師によって多少の差があるようです。 16日(火)の朝は10時ちょっと前にチェックアウトしました。 リフレッシュガーデンクレストにはおおむね不満はないのですが、朝風呂ができるともっと嬉しいところです。風呂の営業は10時からで、出立の朝にはなかなか入れません。チェックアウトした後でも、その日の昼過ぎまでは自由に入浴できることになっていて、時間があればそれも良いのですが、普通は10時にはもう発ってしまうわけで、6時頃に入浴できれば言うことがないのだがと思います。設備の清掃などの関係で難しくはあるでしょうが、全部の風呂を解放しなくても良いので、検討して貰えないものでしょうか。 10時09分のバスに乗ると、そのまま昇仙峡まで行きますので、立ち寄ってから帰ろうと思います。私は行ったことがないのですが、マダムが自分のパワースポットだと常々言っていたので、甲府から近いこともあるし、行ってみようと考えました。 バス路線が全部甲府駅からの発着にはなっておらず、竜王あたりから出て甲府を経由し昇仙峡へ、という運行系統になっているのはなかなか良いと思います。甲府駅でどっと客が乗ってきたのでとりわけそう感じました。一旦甲府駅で乗り換えて、となっていたら坐れなかったことでしょう。 東京から朝の特急に乗ると、ちょうどそのくらいの時間に甲府に到着する按配になります。バスが急に混んだのはそのためでしょう。 県庁所在地の駅から20分も走らないうちに、すでに山の気配が迫ってくるという感じは、関東平野に住んでいるとなかなか味わえない気分です。しかもその先にあるのが全国でも有数の風光明媚な場所というのはうらやましい限りです。住んでいるとかえってなかなか行くことがないのかもしれませんが。 バスの終点の昇仙峡滝上まで乗りました。名前通り、昇仙峡のいちばんの見どころである仙蛾滝の上方にあり、遊歩道ですぐに滝を見ることができます。 しかし、私たちはバス停の近くにある影絵の森美術館に入りました。マダムが前に訪れた時に入れなかったので、ぜひ立ち寄りたいと希望したのです。 遊歩道を通って下のバス停まで歩くつもりだったのですが、何しろマダムが夕方に用事があるためあまり時間がありません。美術館の出札口の女の子に、遊歩道を歩くのにどのくらいの時間を要するか訊いてみたところ、20分ほどだろうとのことだったので、なんとか美術館を見学しても間に合いそうです。 影絵と言えば藤城清治氏の名前がすぐに浮かびます。昔母がちょっと購読していた「暮らしの手帖」という雑誌に、毎号藤城氏の影絵が載っていたのを思い出しますし、中公文庫から出ている邱永漢氏の「西遊記」にも藤城氏による挿絵が満載されており、この「西遊記」をかなり愛読した私にはごく親しい存在でした。 影絵の森美術館は、思った通り藤城清治作品を中心とした展示になっていました。鏡や水盤を利用して無限回廊のように見せた作品などもあって、照明を落とした室内とあいまってなかなか幻想的です。「西遊記」の挿絵も一枚(悟空の旅立ち)展示されていました。 藤城氏以外の作者による影絵も展示しておいて欲しいところですが、常設展はそれだけで、あとは特別展の「山下清展」「竹久夢二展」そして「ハローキティ展」がおこなわれていました。これらはもちろん影絵ではありませんが、マダムはハローキティ展に大喜びです。あちこちへ旅行すると「ご当地キティ」のハンカチや根付けなどを買ってくるのが趣味で、今回もハンカチを2、3枚入手しました。 入場券を買った時に、飲み物の無料券なども貰っていたので、出口の休憩所でひと休みし、それから遊歩道に踏み入れました。 仙蛾滝は、高さや水量はまあまあというところですが、周りの風景と併せて見ると大変「絵になる」滝と言えるでしょう。日本の名滝というのはそういうのが多いようです。華厳の滝を見て 「ナイアガラの滝を見ちまうと、貧弱なもんだなあ」 とうそぶいていたおっさんが居たという話を聞いたことがありますが、滝の良さというのは大きさだけではないでしょう。ナイアガラの滝なんぞは、他の景色がなんにも見えなくなるばかりで、壮大ではあっても別に美しくはありません。そういえば昨日だったか一昨日だったか、ナイアガラの滝で写真を撮っているうちに転落してしまった日本の女子学生が居たそうですが、写真のアングルに困って無理をしてしまったのに違いありません。 持っていた絵地図の縮尺がテキトーなので少し迷いましたが、美術館の出札口のお姉さんが言った通り、20分ほどでグリーンライン昇仙峡のバス停にたどり着きました。 実は往路このバス停に停まった時、マダムが目ざとく足湯を見つけていました。マダムは足湯も大好きで、旅先で見かけるとほとんど欠かさず漬かっています。ここでも漬かるというので、その時間も見込んで下りてこなければならなかったため、余計に時間に余裕がなかったのでした。 ところが、たいていの場所では無料だった足湯が、ここでは有料でした。その足湯を設置している店で食事をすればタダになるそうなのですが、そこで食事をするほどの時間はありません。お金を払ってまで足湯に漬かる気にはなれず、諦めてバス停に戻りました。 甲府駅に戻り、若干の買い物をして、高尾行き554Mに乗り込みました。わりと空いているなと思っていると、発車間際になってどっと乗り込んできました。身延線の電車が到着して、そこからの乗り換え客だったのでしょう。たちまち座席は埋まり、立ち客も出ました。 発車してから、甲府駅で買った駅弁をのんびり食べようと思っていたのですが、ボックスシートに他の人が坐ってしまうと、若干肩身の狭い気分になります。マダムと向かい合ってそそくさと食べ終わりました。 途中で下りる客はごく少なく、どの駅でも乗ってくる一方です。塩山を過ぎて山間部に入ると、さらにどの駅からもハイキング客が乗り込んできて、ほとんどラッシュのような状態になってきました。駅のプラットフォームで待っている人たちは、例外なく茫然とした顔になっていました。まさかこんな鈍行列車がこれほど混んでいるとは予想しなかったのでしょう。 この日はUターンラッシュのピークで、時々車窓から見える中央高速道では、クルマがほとんど動いていないのが見て取れました。何十キロという渋滞になっていたものと思われます。特急も指定席はたぶん全然空いておらず、自由席も混んでいるだろうと敬遠した人たちがみんな普通列車に押し寄せたのでしょう。どうせ混んでいるなら特急のほうがましだった、と後悔した人も多かったのではないでしょうか。 すし詰めの乗客を尻目に、554Mは甲斐大和で1本、相模湖で1本の特急の通過を悠然と待ち、高尾まで2時間弱をかけてのんびり走りました。相模湖なんか高尾までもう1駅というところですから、そこで7分も停車しているのには、ぶち切れそうになった乗客も居たかもしれません。 高尾からは中央線の特快に乗り換え、飯田橋で用事のあるマダムと別れて先に帰宅しました。 川口駅から家まで歩きながら、低地はやはり暑いものだと思いました。甲府周辺も決して涼しくはなく、最高気温などはさいたまあたりと同じくらいなのですが、標高が少し高い分、吹く風がさわやかですし、夕方からはずいぶん過ごしやすくなります。川口に帰ってくると、夕方になっても空気がなんだかべとべとしており、まとわりついてくるようで閉口しました。帰宅してすぐ着ているものを全部脱ぎ捨て、エアコンと扇風機をフル稼働させましたが、流れ落ちる汗が引くまでにはかなりの時間を要しました。 来年あたりは、2泊といわずしばらく滞在してきたいものだと思いました。 (2011.8.17.) |