I 高尾にある私の祖父母の墓参りと、前橋にあるマダムの祖父母の墓参りに、また行ってきました。一昨年(2012年)は行かず、去年と3年前に行っていますが、主に夏の旅行で使った青春18きっぷが残っていたのを消化すべく墓参小旅行をやっています。一昨年の夏は青春18きっぷを使う機会が無かったので、墓参りにも行かなかったという次第です。が、今年(2014年)は少し様相が異なっています。今年は7月末に青春18きっぷを使って出かけてきましたが、初日と3日目に使用しました。ふたりで出ているので、2日分使ったということは、青春18きっぷに設定されている5区分のうち4区分を使ってしまったことを意味します。3年前は山梨のホテルクレストに、去年はローカル私鉄の旅に使った残りを充当しましたが、それらは1日分、つまり2区分しか使っていなかったのでした。 今年はすでに4区分を使っていますので、残りは1区分しかありません。これでは墓参りに行くにあたってあまり旨味が無いので、この1区分は先日、マダムが友達に会いに出かける時に提供してしまいました。それですでに今年の青春18きっぷは使いきってしまったわけです。 従って、今年はもう墓参りを取りやめても良かったのですが、なんとなく行くアタマになってしまっていたのと、『法楽の刻』を仕上げてとりあえず一息ついたところでリフレッシュしたいという気分があったのとで、2枚目の青春18きっぷを購入して出かけることにしたのでした。『セーラ』はまだらちがあかないし、『星空のレジェンド』にもそろそろ着手しなければならないし、本当は気を抜いている時では無いのですが、まあ一二日気分を入れ替えてこないと自分も煮詰まってしまうし、と自己を正当化しました。 そして2枚目の青春18きっぷを買うならば、それを充分に使いきるためにも、2日かけて旅してこようと考えました。そうするとまた4区分を消費できます。 高尾と前橋という、かけ離れた場所にあるお墓に同日に参るので、ちょっとした小旅行にはいつもなっていますが、泊まりがけにしたことは今までありません。かなり以前に、前橋のお墓に参ってからその足で足尾まで行って温泉に泊まったということはありますが、その時は高尾のお墓には参りませんでした。 去年の墓参行のラストで、前橋駅前の温泉に漬かり、それがなかなか良かったので、今年もそこを訪れることにして、その近くのホテルに泊まり、翌日少し足を伸ばす、という行程を組んでみました。 で、昨日(8月31日)から今日(9月1日)にかけて行ってきました。なんだか青春18きっぷの件と言い、無理矢理こじつけたような感じですが、けっこうリフレッシュはできた気がします。 8時14分新宿発の臨時快速「ホリデー快速富士山1号」に乗りました。中央線方面に出かける時は、たいてい武蔵野線経由の臨時電車などを使うことが多いのですが、この夏はどうしたことか、大宮方面から武蔵野線を経由する「ホリデー快速」が運転されていません。今まで乗った限りにおいては、決して利用率の低い列車ではないと思うのですが、削除されてしまったのは不思議です。ともあれそういう列車が無いので、おとなしく新宿から乗ることにした次第です。 高尾までですから、もちろん普通の特快電車にでも乗れば良いようなものですけれども、せっかく特急車輌のホリデー快速が運転されているのに乗らないのももったいない気がします。ふだん通勤電車でしか通らないところを特急車輌で通るのも新鮮ですし、中野や国分寺に停車しないのも新鮮です。マダムも喜んでいました。ただし、スピードはあんまり出ません。中央快速線はぎりぎりいっぱいのダイヤなので、どの列車も全体的なスピードを合わせなければならず、停車駅が少ないと逆にそれだけスピードが落ちるという情けないことになっています。 新宿〜高尾45分という、特快よりむしろ遅いくらいの時間をかけて、8時59分高尾着。列車はこのまま河口湖まで行きますが、立川や八王子までで下りる客も多く、高尾でもだいぶ下りました。みんな、ちょっとした非日常を味わってみたかったのでしょう。 高尾駅からバスですが、祖父母の墓のある八王子霊園方面へ向かう便は多く、たいてい1、2台駅前に待機しています。「霊園正門」というバス停で下りると、「東京霊園」というのと「八王子霊園」が隣接しているので、馴れないと迷います。もう20年以上前になりますが、私がはじめてひとりで墓参りをしてみようと思い立って行ってみた時は、見事に霊園を間違え、探し当てられないでいるうちに陽が暮れてきて、結局なすすべなく引き返すはめになりました。 この霊園の墓石は規格が決まっているようで、みんなほとんど同じ形と大きさをしています。その点でも探しにくいのですが、さすがに3回目ともなるともう迷うことはなく、まっすぐに墓に向かいました。 都立の霊園だけあって、芝刈りや掃除も行き届いています。参拝者がそういう作業をする必要はほとんどありません。前に供えられた線香の燃えかすをかき出して捨てるくらいです。 あとは水を入れ替えて、前日用意しておいた花を活けます。私らはたいてい前もって家の近所のスーパーマーケットで供花を買って持ってゆきます。墓地の近くで買ったりすると、たいてい倍以上の金額をぼったくられることになるので、敬遠しています。 祖父の好きだったコーヒーと、東ハトのオールレーズンを供えるのが常なのですが、今回はマダムがうっかりオールレーズンを忘れてしまいました。マダムの祖父母の墓に供えるお菓子類も全部忘れてきたとのことです。出がけにせかしたのが悪かったのかもしれませんが、残念なことでした。前回はライターのガスが無くなっていて線香に点火できず、私がけっこうねちねち責められましたので、これでおあいこと言うべきかどうか。ともあれ缶コーヒーだけ供えて参拝しました。 雨がいつ降るかわからないような天気ではありますが、いちおう降ってはおらず、気温もここしばらくの例に洩れずかなり低くて、近年の8月末とは思えないような過ごしやすい日でした。ただ湿度はかなり高く、歩けば汗ばみましたし、何よりマダムは気管支炎が治りかけだったり、私も金曜日に医者にかかったりしたような状態で、ふたりとも体調がよろしからず、霊園の中の坂道を上がるだけで息が切れました。 高尾駅に戻り、ふた駅だけ乗って八王子に出ました。ここから八高線で群馬県に向かうのがおきまりのルートです。私らの鉄道趣味のせいだけではなく、八高線にはマダムの祖父の想い出と結びついた路線なのでした。生前前橋に住んでいたマダムの祖父は、当時聖蹟桜ヶ丘に住んでいた長男(マダムの伯父)を訪ねる時、決まって八高線で八王子まで来て、京王線に乗り換えたのだそうです。当時としても、高崎線を使って大宮から埼京線に乗り換え、新宿から京王線というルートにしたほうが所要時間は短かったのではないかと思いますが、八高線にのんびり揺られるのが好きだったのでしょう。 その頃は八高線に走っているのも鈍足のキハ40系であったと思いますし、高麗川で強制的に乗り換えさせられるということもなかったでしょうから、八高線といえどもだいぶ様変わりしていますが、車窓の景色はさほど変わりません。関東平野の西辺の、丘陵地帯との境目あたりを縫うように走ります。新田義貞が鎌倉を攻めたルートでもあろうと思います。 最初の、3年前の墓参行の時は、高麗川で電車からディーゼルカーに乗り換えるにあたって45分くらい待ち時間があり、少々もてあましました。その反省にもとづき、去年は2分乗り換えという便にしてみたら、待ち時間はなかったものの、座席の少ないディーゼルカーは大半埋まっていてなかなか坐れませんでした。それで、今回は30分ほどの待ち時間がある電車にして、ディーゼルカーがすいているうちに乗り込めるよう配慮しました。私思うに、八王子〜高麗川を電化したからと言って、電車とディーゼルカーに完全に運行を分離することもなかったのではないでしょうか。八高線のディーゼルカーに使われているキハ110系は、小海線でハイブリッドカーの試験をしていたはずで、それをもう少し発展させれば、電化部分は電車として、非電化部分はディーゼルカーとして走らせることも不可能ではない気がします。それによって、八王子〜高崎の直通運転も残せば良かったのにと思うのです。 高崎着13時09分。高崎駅は近年ずいぶんお馴染みになってしまいました。1ヶ月前にも訪れて、眼医者を捜したり、ウナギ屋を捜したりしました。墓参行の時は毎回ここで昼食をとっていますけれども、それ以外にもなぜか立ち寄ることが多いのです。マダムと一緒のこともあれば、私ひとりということもあります。あんまり遠い気がしなくなってきました。 駅の構造などもすっかり身についてしまいました。東口側と西口側に別の駅ビルがあるのですが、その両側を活用します。今回は、東ビルにある携帯電話ショップでマダムの携帯電話の充電をはじめ、西ビルに行って昼食をとり、また東ビルに行って携帯電話を回収しつつアイスクリーム屋に立ち寄るなど、東奔西走(?)と言うべき状態でした。東西通路の途中でストリートシンガーの女の子が ──死んでしまえと思った 死んでしまえと思った♪ と連呼して歌っていたのが妙に耳につきました。 14時48分の電車で前橋に移動しました。墓地は前橋市内ですが、最寄り駅は上毛電鉄の心臓血管センターです。それで上毛電鉄の起点である中央前橋にさらに移動しなければなりません。 さほどの距離ではないので、前回も前々回も、前橋駅から中央前橋駅まで歩いたのですが、途中に大きな歩道橋があったせいもあり、前回あたりからマダムから苦情が出ました。疲れると言うのです。 今回は体調不良ということも鑑みて、両駅間を結ぶシャトルバスに乗ることにしていました。このシャトルバス、木張りのレトロ調バスとして前橋の名物になっていたのですが、お化粧直しのためとかで、しばらく普通のバスで運行していました。少し残念です。 上毛電鉄の電車の到着と出発に合わせての運行なので、1時間2便しか無いのもやや不便で、だいぶ待たされました。しかし乗ってしまえばやはり楽で、あっという間に中央前橋駅に到着します。 最近のローカル私鉄標準型と呼ぶべき井の頭線のお古の車輌に乗って12分、何度来てもいっこうに駅前が発展した様子のない心臓血管センターに到着します。この駅はもともと列車交換のための信号所に過ぎず、駅名になった医療施設が近いので駅に昇格したものの、商業施設らしきものは周囲にほとんど見当たりません。 しかし墓地には近く、重宝します。道順もすっかり身につきました。 こちらは都立の八王子霊園のようには墓地側が管理してくれず、参拝の少ないお墓は雑草がボウボウに茂っています。 マダムの祖父母のお墓にも、だいぶ雑草が生えていました。雑草というにはずいぶん立派に育ったものもあります。今回などは、百合の花が一本きれいに咲いていましたが、その位置からしてどう考えても誰かが植えたとは思えず、雑草の一種らしいのでした。せっかくなので、その花だけはそのままにしておきました。 草取りに少し手間取りましたが、無事に参拝を終え、心臓血管センター駅に戻ります。依然として気温は上がらないのですが、だいぶ汗をかき、早く風呂に入りたい気分です。 中央前橋駅から、またシャトルバスで前橋駅へ戻り、それから駅近くのホテルにチェックインしました。 しばらくしてから外へ出て、まず駅前のショッピングモールの中の食堂で夕食をとりました。 このモール、はじめてマダムと私が電車で墓参りに来た6年前の暮れにはイトーヨーカドーでした。供花はそこで買ったのです。ところが、3年前の夏、同じように供花を買うつもりで来てみたら、なんとイトーヨーカドーが潰れていました。その時はまともな花屋でまともな値段の花束を買わねばならず、だいぶ出費がかさみました。そして去年来てみるとエキートというモールに変わっていたわけです。テナントは去年より増えているようですが、まだ店が入居していなかったり、工事中の箇所も多く、なんとも心許ない雰囲気です。県庁所在地駅の駅前という恵まれた立地なのに、この心許なさはなんなんだろう、と思ってしまいます。 とはいえ、食事に入ったグリルはなかなかのレベルでした。食べログでもかなり評判の良い店であったようです。 そのあとで温泉に漬かり、ボディケアなども受けて、だいぶ体調が復してきた気がしました。 これで帰らずに、ほとんど隣と言って良いホテルに泊まればよいというのが、実に気楽です。やはり出かけてきて良かったと思いました。 (2014.9.1.) |