忘れ得ぬことどもII

続・旭日旗騒動

 「旭日旗騒動」と題したエントリーを書いたのはもう5年半くらい前の2013年6月のことですが、はた迷惑な隣国の理不尽なイチャモンは、もうとどまるところを知らないようです。
 今年(2018年9月の、韓国でおこなわれた国際的な観艦式で、参加予定であった海上自衛隊に、正式の隊旗である旭日旗を掲揚しないように申し入れがあったことは記憶に新しいところです。そういう場で正式な軍旗を掲揚するなというのは、言うまでもなくその国に対するたいへんな侮辱になります。スポーツの大会などで、主催者が、おまえのところの学校の制服が気に食わんから開会式には着用してくるな、と言ったようなもので、そんなことを言われたらどこの学校だって参加を見送るでしょう。
 それでも日本政府の事なかれ体質のことだから、言われるままに隊旗を下げて参加するのではないかと危惧もされていましたが、さすがにそこまで言われて観艦式に参加することはありませんでした。まあ常識的な対応です。
 それでも韓国は若干びびったのか、
 「すべての参加国に、国旗のみを掲揚して入港するように通告した」
 などと弁明していました。他の国々がそれに従っていれば、日本だけが尻の穴の小さいことを言い張ってへそを曲げたということになったのでしょうが、あいにくとそんな屈辱的な通告に従う国など一ヶ国も無かった模様です。
 しかも、当の韓国海軍からして、かつて李舜臣が使ったと言われる軍旗を持ち出して掲揚していたというのですからあきれます。自分の通告を自分で破ってどうするのだと言いたくなります。
 これも韓国側に言わせれば、
 「参加国と主催国は違う」
 ということらしいのですが、この種の自分勝手な韓国式論理が徐々に世界に知られてきたのは朗報と言えましょう。

 ちなみに李舜臣というのは、豊臣秀吉唐入りのときに、李氏朝鮮軍でただひとり果敢に抵抗した水軍の将です。と言ってもまともに海戦をおこなっては勝ち目が無いので、ゲリラ的に輸送船などを狙って何隻か撃沈させました。まあそれ自体は、一見卑怯にも見えますが、弱体な側が採る戦術としては妥当に思われます。なお従来、李舜臣の攻撃により日本軍の補給線がズタズタにされた、みたいな言われかたが多かったのですが、全体として見れば日本の海上輸送はおおむね順調だったというのが最近の説です。李舜臣が何隻か沈めたとしても、大勢に影響は無かったということです。
 朝鮮軍の中で、ほぼ唯一の戦果を挙げた将軍だったのですが、当時の李氏王朝は、少しでも出てきた杭は打ちまくるのが常で、李舜臣も讒言されて一兵卒に墜とされたり、一時は投獄される憂き目を見たほどでした。
 その後二度目の唐入りがはじまると、他の将軍ではまったく日本軍に歯が立たず、やはり李舜臣しか居ないということで、再度起用されます。しかし今度は日本側も輸送船を襲われることに対して充分対策してきていたので、同じ手は使えません。
 で、李舜臣は待ちの一手を採り、日本ととのあいだに休戦協定が結ばれて、日本軍が引き揚げるところを狙って襲撃しました。いまのような戦時国際法が無い時代ではありましたが、さすがにこれは倫理に反するおこないでしょう。しかし李舜臣を擁護するとすれば、休戦協定は日本と明のあいだに結ばれただけで、李氏王朝は蚊帳の外であったという事情があります。つまり朝鮮は日本と休戦していないのだからして、引き揚げる日本軍を襲っても構わない、という論理だったのかもしれません。
 この襲撃が成功していればまだ朝鮮の面目も立ったのかもしれませんが、あいにくと李舜臣が襲ったのは島津氏の艦隊で、ただでさえ日本最強とも目される戦闘力を持つ連中だった上に、版図には離島も多く海戦もけっこう馴れています。李舜臣はさんざんな反撃を受け、あえなく戦死するのでした。李氏王朝のならいからすれば、負けて帰ったりすればまず確実に処刑されていたでしょうから、戦死できたのはまだ幸せだったと言えそうです。
 そんな不運な海将でしたが、ともかくとことんだらしなかった李氏朝鮮軍の中では出色です。相手が島津軍だったのも幸いで、島津というのは敵に対する称賛をまったく惜しまない性質があります。だらしない朝鮮軍の中にも、なかなか骨のあるヤツが居た、というので、敵ながらアッパレというわけで、李舜臣の名は薩摩において語り継がれました。東郷平八郎日本海海戦の前に李舜臣の霊に戦勝を祈った、などという話もあります。これは根拠の乏しい話らしいのですが、しかしそういう話が弘まったのは、薩摩人であった東郷ならそれもありそうだと思われたのでしょう。
 多少なりとも日本に一矢を酬いた将軍ということで、李氏朝鮮では大いに顕彰されましたし、現代の韓国でも非常に高く評価されています。日本軍に対して壊滅的な被害を与えたという設定になっており、韓国ではよくある話ですが、「世界四大提督」のひとりに数えたりもしています。
 「世界三大提督」ということなら、普通、トラファルガー海戦ネルソン提督、独立戦争ジョーンズ提督、それに日本海海戦の東郷提督の3人を指しますが、韓国ではこれに李舜臣を加えて四大提督とし、あるいは東郷に替えて三大提督に押し込んだりしています。むろん、韓国以外では通用しません。
 その李舜臣の軍旗を掲揚したというのは、明らかに日本に対するイヤガラセでしょうが、海上自衛隊が参加を見送ってその場に居ないところでイヤガラセをしてなんになるのだろうと思ってしまいます。これはあとの話にも関わりますが、韓国がやらかす日本へのイヤガラセというのは、日本に対して直接的におこなうことはわりに少なく、その他の国、もしくは国連などに対して「日本とはこんなにひどい国である」とアピールすることに情熱を燃やすことが多いようです。直接イヤガラセをする勇気がないものと見えます。

 旭日旗アレルギーはもはや韓国の国家方針となっているかのようで、5年半前のエントリーに書いたような、世界各国の「旭日旗デザインのように見える」デザインに対してイチャモンをつける作業を、飽きもせず続けているようです。旭日旗デザインというのは要するに放射線(集中線)デザインですから、誰もが思いつく意匠で、いちいちイチャモンをつけてまわっていたら本当にきりがないだろうと思います。しかし誠信女子大の客員教授である徐敬徳(ソ・ギョンドク)などを中心に、いまだに精力的に世界中の放射線デザインに文句をつけています。その方法は、当該デザインを採用したところに対して何度も何度も電子メールを送りつけるという迷惑なやりかたで、あまりの粘着ぶりに面倒くさくなって当該デザインを取り下げるところも出てきているようです。
 イチャモンの趣旨は次のようなものです。旭日旗とは日本軍国主義の象徴であり、いわばハーケンクロイツと同種のものである。日本の侵略を受けたアジアの国民は、この旗を見ると、その残虐非道な経験を想起して、非常な精神的苦痛を受ける。あなたがたはハーケンクロイツのデザインを採用したりはしないだろう。それなのになぜ、旭日旗のデザインを平気で採用できるのであるか、云々。
 欧米の人々は、ナチスと聞くと瞬時に思考停止するところがあり、旭日旗がハーケンクロイツと同じだなどと指摘されれば、よく知らない人なら、それは大変だ、と思ってしまうかもしれません。それを見てアジアの人々が精神的苦痛を受けるのであれば使わないほうが良い、と考える心優しい人たちも少なくないでしょう。
 先日も、カナダだったかの学校で、歴史的資料として掲示してあった旭日旗に、韓国系の学生たちがイチャモンをつけて取り下げさせるという騒動がありました。このときは、確かネットを利用した署名活動がおこなわれたのだったと記憶しています。たとえ本当に日本軍国主義とやらの象徴であったとしても、史料として掲示されていることさえ許容できないというのは、どれだけメンタルが弱いのでしょうか。「太陽を怖がる吸血鬼と同じじゃないか」などとネットでは指摘されています。
 もちろん、旭日旗をハーケンクロイツと同一視するなど無茶もいいところです。ハーケンクロイツはナチスの党旗ですから、確かにナチスの、そしてナチズムの象徴でしょう。しかし旭日旗は海軍旗であり、かつ漁船の大漁旗などにも多用されているめでたい意匠です。海軍旗に使われていたから軍国主義の象徴というのは乱暴な話ですし、そもそも「日本軍国主義」なる思想がどこかにあったわけでもありません。
 ただ、こういったことは日本国内では自明なのですが、韓国の主張が他国で荒唐無稽なものと受け取られるとは、必ずしも言い切れません。日本政府も韓国のこうしたイチャモンに対し、その都度きちんと反論してゆかないと、いつの間にか「旭日旗=軍国主義」という誤った印象が国際的に拡がってしまう危険があります。
 実際、日本のメディアでも、この騒動を報じるときに、
 「旭日旗は、韓国や中国では、日本の軍国主義の象徴として忌避されることも多く……」
 などと要らぬ注釈をつけるところが目立ちます。これはすでに徐敬徳一派の思うつぼにはまっていると言わざるを得ません。

 なぜそうなる、韓国や中国で忌避されているのは事実だろう、と言う人が居るかもしれませんが、それは違います。
 この報じかただと、韓国や中国では、これまでずっと旭日旗が忌避されてきたように思えてしまいます。そして、それは明らかに事実ではないからです。
 国際的な観艦式で、これまで海上自衛隊の隊旗を掲揚しないでくれと言われた例がいちどでもあったかどうか。
 観艦式だけではありません。当の韓国からして、旭日旗を見ると精神的苦痛を受けるからやめてくれ、と合同訓練などの際に日本に申し入れてきたことが、2011年より前にいちどでもあったかどうか。
 いちどもありません。この狂気に満ちた騒動がはじまったのは、はっきりと2011年からであると言い切れるのです。
 サッカーのアジア杯決勝で、奇誠庸(キ・ソンヨン)選手がグラウンドで猿の真似のパフォーマンスをしました。これは対戦相手である日本を侮辱したふるまいであるようです。
 韓国人はなぜか、猿の真似をすると日本人が屈辱を感じると思いこんでいるのでした。ネットスラングでも「倭猿」などとよく使います。確かに昔、日本人はイェロー・モンキーなどと呼ばれて欧米人から侮辱されていたことがありましたし、映画「猿の惑星」は日本人の暗喩らしいという説もあります。しかし、これは白人から言われるから侮辱になるのであって、同じイェローである韓国人から言われても、日本人としてはまったくダメージを受けません。

 ──おまえらだって同じイェロー・モンキーじゃないか。

 と思うばかりです。
 ともあれ、韓国人が日本人に向けて猿の真似をしてみせるのは、はっきりと侮辱の意図があることは確かで、奇の行動は、

 ──さすがにひどいだろう。やはり

 と韓国内からさえも批判を浴びました。
 奇は雲行きのおかしさに狼狽し、
 「観客席に旭日旗が揚がっているのを見て、反射的にやってしまった」
 と弁解しました。
 ガキの言い訳か、と普通ならさらに奇をさげすむところですが、なぜか韓国では

 ──そうか、それなら仕方がない。

 ということになったらしいのでした。
 そしてその翌年、ロンドンオリンピックのとき、やはりサッカーの試合に際して、朴鍾佑(パク・ジョンウ)選手が試合終了後に、「トクトヌン・ウリタン」と書かれたプラカードを持ってグラウンドを駆け回りました。「独島はわが領土」というヤツです。独島とは言うまでもなく島根県の竹島のことです。
 これは政治的主張ではないかと、運営委で問題になりました。オリンピックでの政治的主張は御法度で、過去にはメダルを剥奪された例さえあります。
 窮地に陥った韓国側は、とんでもない主張をはじめます。
 「日本の体操選手だって、旭日旗をモティーフにしたユニフォームを着ていた。これは政治的主張である。朴の行為をとがめるのであれば、同様に日本が体操で得たメダルも剥奪すべきである
 ちなみに朴が走り回ったのは対日本戦のときではありません。従って奇のケースのような弁解の余地もありません。体操選手のユニフォームに話が及んだのはまったくのとばっちりでした。
 このあたりから、旭日旗に対する粘着がはじまります。つまり、自分たちの国の選手の愚行による負い目をなんとか感じずに済むようにしたいと思い、

 ──ウリたちは悪くない。あんなことをしたのは日本の旭日旗のせいだ。ウリたちは旭日旗を見るとカッとなってしまうんだ。

 と自分たちに(無意識のうちに)言い聞かせたわけです。ただ、それだけでは説得力がありません。説得力を持たせるには、旭日旗が悪いものだという設定をおこなわなければなりません。

 ──そうだ、旭日旗は昔、日本の海軍が使っていた。つまり日本軍国主義の象徴だったのだ。

 韓国人の(あえて集合体として言います)おそろしいところは、このようにして自分で作った設定を自分で信じ込んでしまう性質にあります。慰安婦だって徴用工だって同様です。そういえば「68歳の元徴用工」なる者が訴え出たなんて話もありました。68歳なら昭和25年生まれですので、終戦の年には生まれる5年前です。いったいどこに徴用されたというのでしょうか。とはいえ彼はきっと詐欺を試みたわけではないのでしょう。自分で作った設定を信じ込んでしまっただけなのです。
 ひとたび信じ込むと、検証などまったくしなくなります。旭日旗について上のような設定ができてしまうと、自分たちは過去ずっと旭日旗を見て苦しんできたという「記憶」が創造され、2010年まではなんの苦しみも感じていなかったという「事実」なぞどこかへ飛んで行ってしまいます。
 ちなみに中国は旭日旗について文句を言ったことはただのいちどもありません。韓国で旭日旗騒動がはじまってから、ごく一部の反日活動家が便乗しては居ますが、国として日本に旭日旗を使わないよう要請するなどというバカなことはしていませんし、今後もしないでしょう。日本の報道で「韓国や中国では……」などと注釈するのは、中国に関して事実に反したことでもあります。
 まして他のアジアの国々が旭日旗を忌避したなどという事実はまったくありません。むしろ好感を持って迎えられています。徐敬徳が言う「アジアの国民」云々は誇張もいいところです。もっとも韓国人は都合が良いときだけ「アジア」を表に出すところがあり、例えばUSAやヨーロッパの国々などで韓国人の留学生や旅行者が暴行されたりすると、「アジア人差別」だのなんだのと言い出します。たぶんアジア人だったのが問題ではなく、韓国人であったのが原因と思われるのですが。
 櫻井よしこ女史の名言、

 ──あなたのおっしゃるアジアって、どこの国のことかしら。

 を地で行くような言動です。

 何よりも気に障るのは、徐にしろ誰にしろ、日本国内に対して直接文句を言うということを一切していないことです。きゃりーぱみゅぱみゅが旭日旗っぽいデザインの扮装をしたときに、韓国のファンが「失望した!」というようなことをネットでコメントしたということはありましたが、直接の批判ではありません。
 ネット上でよく冗談に、
 「そんなに旭日旗が嫌いなら、なんで朝日新聞の社章には文句を言わないんだ?」
 と言われています。確かに朝日新聞のマークは旭日模様の一部に他なりません。最近、朝日新聞のソウル支局では、姑息なことに社章を掲示していないということが暴露されましたが、2010年以前はどうだったのでしょうか。またソウルで使っていなくとも、ネットで朝日新聞のサイトを見れば一目瞭然です。要するに、日本国内に直接イチャモンをつける勇気は、彼らには無いのだと思うほかありません。
 しかし観艦式という公式の場で旭日旗の掲揚を禁じてきたとなると、そろそろそういう自制も効かなくなってきた可能性があります。旭日旗はハーケンクロイツと同じ、従って世界が批難するに違いない、という思いこみが、韓国人特有の「願望の既成事実化」回路によって確信となり、世界に向けて大恥をさらすときも近いような気がします。
 すでに徴用工判決(事実上の日韓基本条約の無視)と、慰安婦の癒やし財団解散(事実上の2015年日韓合意の破棄)によって、日本人の大半に、韓国に対するマイナスイメージが積み重なっています。はっきり言って、いままで韓国をいちばんプラスイメージでとらえていたのは日本人に他ならないわけで、その日本人に嫌われた韓国が今後どういうことになるか、ウォッチャーのはしくれとしては半ばワクワクしながら見守っていたくなります。

(2018.11.24.)

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